つれづれ読書日記

日々の読書感想を、読みっぱなしにしないで忘れないうちにメモしておきたいと思います。

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ダンテ「神曲」

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寿岳文章訳・集英社文庫

 格調高いイタリア文学の古典。長編叙事詩なので読みにくいのではないかという先入観は読み始めるとともに吹き飛ばされた。遠い西洋の遠い過去の代表的な古典(西暦1300年イタリア)であるのに内容が生々しく感じられるからである。
 主人公ダンテが、暗い森の中で迷い、地獄へ下っていく話なのだが、その地獄が上層から下層まで、きわめて構造的・幾何学的に描かれていて、このあたりは西洋的である。日本の「三途の川」は渡る場所が3カ所あるそうだが、日本の地獄もここまで立体的、精密な構造はしていない。そして、生前犯した罪によって、ことこまかに落ちる場所が決まっていて、責め苦も異なるのである。
 ダンテはフィレンツェにおける党派の政争に破れ、市を追放され、後半生は流浪の中におくったそうだが、政治的、宗教的な争いの中で経験したさまざまな不正義、裏切り、略奪、敵対行為を厳しく糾弾し、同時代の人間が地獄の中で責められる様が描かれている。それは、たとえていうならば、郵政民営化に反対して刺客を送られ、自民党を離党した政治家が、後の放浪生活の中で小説を書き、その中に、責め苦に苦しむ小泉首相や武部幹事長を描いて溜飲を下げているかのような生々しさである。
 同時代の人間だけでなく、過去の歴史上の人物も次々と裁かれる。ギリシャやローマの歴史上の人物、キリスト教世界の作品から多くが引用されているのだが、まあ、日本に移すと織田信長がその残虐・虐殺・皆殺しの罪で裁かれ、明智光秀が主君への裏切りで裁かれ、陸軍大将松井石根が南京大虐殺を断罪され、トルーマンが原爆投下を糾弾され、平家がその驕慢さゆえに滅びたことを哀れまれているようなものである。
 イタリア文学最大の古典といわれる作品もその成立の裏には生々しい作者の感情的裏付けがあり、その内容は、同時代の人にとっては親しみ易いものであったと想像できる。文学作品の創造の瞬間には人間的な業火が燃え盛っている。
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/01/18(金) 17:48:12|
  2. イタリア文学
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アミーチス「クオレ」

クオレ

E・デ・アミーチス/和田忠彦訳、新潮文庫
 小学生のときに読んで以来久しぶりに読んだ。「機関車」や「フィレンツェの小さな代書屋」などいくつかのエピソードを読んで、かつての強烈な印象、心に残っていたシーンがよみがえってきて、やはり涙を誘われる。
 登場する子どもの善悪がはっきりしすぎていて、リアルでないところもあるが、他人を思いやる心の大切さ、博愛、自己犠牲のこころの大切さを訴えている。軍国主義的、愛国主義的な主張が強いところは、19世紀後半のイタリアの歴史的な事情、スペインやオーストリアの支配を打ち破って祖国の独立と統一をはたして間もないという国の事情、作者アミーチス自身が独立戦争に参加していることなど歴史的社会的な背景を考えると納得できる。
 そんな軍国主義的なところ、お説教臭いところがあるにもかかわらず、子どもの学校生活が生き生きと描かれていて、今日読んでもその文学的な価値は失われていない。この本を読めば、だれでも、忘れていた小学生時代の心の震えや新鮮な驚きの感情を思い出すと思う。今日なお名作として読み継がれていくべき本であると感じた。

 かつて読んだのは講談社版「少年少女世界文学全集」のイタリア篇で、今回読んだのは新潮文庫完訳版である。講談社版はまだ実家にあるので構成を調べてみると、子ども向けに半分以上縮めている。削除したのは戦争シーンや、大人や作者のお説教が直接現れているところで、矢崎源九郎による翻訳・編集は今日の目で見ても良質なものだと思う。
 和田忠彦訳によるこの新潮文庫版は絶版で、「平凡社ライブラリー」で再刊されている。

テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/01/15(火) 18:30:36|
  2. イタリア文学
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