つれづれ読書日記

日々の読書感想を、読みっぱなしにしないで忘れないうちにメモしておきたいと思います。

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ピーター・パン

peterpan.jpg
ジェームズ・バリ/本多顕彰訳(新潮文庫)

 この本には、ディズニーのピーター・パンと違って、海賊やチクタク・ワニは出て来ない。あれは、この本の続編の戯曲『ピーターとウェンディ』をアニメにしたものだ。ディズニーのピーター・パンは本当によくできているアニメで、子どもが夢中になって見るし大人も楽しめる。ストーリーの展開のリズムがよく、思わず笑ってしまう個所が何カ所もある。
 しかし、この地味な『ピーター・パン』の本も、なかなか深いものがあって、「子どもはみんな生まれてくる前には妖精を知っていたし、赤ん坊のときにはまだ覚えていた」が、大人になるにしたがってみんな忘れてしまうというところなど、本当によく分かる。この本を読んだ人は誰でも自分の幼少年時代を思い出して微笑むだろうと思う。
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  1. 2008/03/13(木) 17:07:06|
  2. イギリス文学
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ジーキル博士とハイド氏

Dr. Jekyll and Mr. Hyde

スティーブンソン/田中西二郎訳(新潮文庫)

 ジーキル博士は、裕福で誰からも敬愛される紳士である。しかし、それは表の顔で自分の中に享楽的で背徳的な面が押さえつけられていることを自覚していた。その自分の内なる邪悪な面を解放する魔法の薬を発見する。そうして生まれたのがハイド氏である。この薬を飲むと、性格や形相だけでなく、からだの大きさや運動能力さえ変わってしまうのだ。博士は自分の享楽的な欲望を押さえつけられなくなり、我慢できなくなるとこの薬を飲み邪悪なハイドに変身し、悪徳の限りを尽くす。
 そして、ついに悲劇がやってくる。ハイドは、温厚で誠実だと世間の人に思われているもとのジーキル博士に戻れなくなるのだ・・・・。

 だれでも人間なら持っている二重性、世間に良い子に思われていたいという仮の自分というものを意識する瞬間があるものだが、この小説はその人間のもつ根源的な二重性を見事に形象化した傑作である。

テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/08(土) 11:55:10|
  2. イギリス文学
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サッカレー「虚栄の市(Vanity Fair)」

三宅幾三郎訳/岩波文庫
 レベッカとアミーリアという二人の学友が女学校を卒業して去るところから物語が始まる。アミーリアは、幼なじみで許嫁のジョージをいちずに恋しているが、ジョージはお金持ちの商人の息子であるが、少し軽薄なところがある。ジョージの小学校時代からの親友であるドビンはひそかに親友の許嫁であるアミーリアを恋している。レベッカはいやしい生まれだが、持ち前の才気と美貌で上流社会へのし上がっていく。
 ジョージは遊び回っているお金持ちのぼんぼんであるが、アミーリアの家が破産して没落した時、親友のドビンに説得されてアミーリアと結婚する。アミーリアはただいちずでジョージの俗物根性も見抜けないし、ドビンが密かに自分を慕っていることにも気づかない。ドビンは、風采のあがらないどんくさい大男なのだ。
 社交界を牛耳り、男を振り回すレベッカに、ジョージが逢引きの約束を取り付けようとしているとき、ジョージに召集令状が来る。そして、ジョージは戦争で死に、アミーリアのお腹に男の子が残される。
 4人が主人公であること、ドビンと「戦争と平和」の主人公ピエールの性格の類似、ナポレオン戦争が背景にあることなど、トルストイ「戦争と平和」にシチュエーションが似ている。20年後に書かれた「戦争と平和」は「虚栄の市」の影響を受け、トルストイはこの本を読んでいたと思うのだがどうなのだろう。
 アミーリアはジョージの遺児を育て、ドビンは経済的にも親友の残された母子の面倒を見る。しかし、アミーリアはドビンが以前から自分を慕っていたことを気づいていながら知らない素振り、ドビンの愛を受け入れない。ついに、ドビンはアミーリア母子のもとから去っていく。ドビンの真価に気づいていたのはレベッカで、レベッカは出征の直前にジョージからもらった付け文をアミーリアに見せる。しかし、その前からアミーリアの決意は固まっていたのである。
 ついにドビンが船に乗って帰って来る。ドビンになついていたジョンが双眼鏡の中にドビンを発見して叫ぶ。「わあい、ドップだドップだ」ドビンはアミーリアのもとに帰って来たのである。
 最終章に近いこのシーンでは思わず泣いてしまった。ぜひお薦めしたい名作である。

 私の読んだのは、三宅幾三郎訳(岩波文庫、全6巻、1940年)であるが、現在手に入るのは、中島賢二訳(岩波文庫、全4巻、2004年)である。

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/01/22(火) 17:49:04|
  2. イギリス文学
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ピアス「トムは真夜中の庭で』(Tom's Midnight Garden)」

トムは真夜中の庭で
高杉一郎訳・岩波少年文庫

 主人公トムは弟が「はしか(麻疹)」にかかったため、夏休み中親戚の家に預けられる。そして夜中に家の裏にある庭を冒険する。そのいきさつ、一階のホールにあるいわくありげな大時計、庭の描写など、大変詳しく書かれている。ここの部分で、気の短い読者は飽きてしまうかもしれない。今の児童文学では、すぐに面白い話に入っていかないと、読者はついてこないだろう。描写がこまかく論理的で、非常に詳しいのである。こういう息の長い論理的な文章を追っていくのは西欧人は得意なのだろうか。日本的な省略の仕方、花鳥風月的な余白の文章からかけ離れているので、日本人の体質にあわないのかもしれない。
 しかし、我慢して途中まで読んでいくとすべての細部の構成が生きてくるのがわかる。構成上の論理的な必然があり、細部が丹念にリアリズムで描かれたからこそ、後半が盛り上がるのである。ドラゴンやトロールが出てこなくてもファンタジー小説は書ける。細部がリアリズムで固められたファンタジー小説なのである。
 そして、丹念に最後まで読み通したとき、トムが真夜中の庭で会ったハティとは誰であったのかを読者は忽然と理解する。そして歴史の中で生き、死んでいく人間というものの存在と、そのはるかなる思いに読者は共感し感動するのである。
 私はこの本を最後まで読んで、イギリス戦後児童文学の最高傑作といわれている意味をよく理解した。

テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/01/19(土) 12:35:35|
  2. イギリス文学
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