FC2ブログ

つれづれ読書日記

日々の読書感想を、読みっぱなしにしないで忘れないうちにメモしておきたいと思います。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

ダンテ「神曲」

sinkyoku.jpg
寿岳文章訳・集英社文庫

 格調高いイタリア文学の古典。長編叙事詩なので読みにくいのではないかという先入観は読み始めるとともに吹き飛ばされた。遠い西洋の遠い過去の代表的な古典(西暦1300年イタリア)であるのに内容が生々しく感じられるからである。
 主人公ダンテが、暗い森の中で迷い、地獄へ下っていく話なのだが、その地獄が上層から下層まで、きわめて構造的・幾何学的に描かれていて、このあたりは西洋的である。日本の「三途の川」は渡る場所が3カ所あるそうだが、日本の地獄もここまで立体的、精密な構造はしていない。そして、生前犯した罪によって、ことこまかに落ちる場所が決まっていて、責め苦も異なるのである。
 ダンテはフィレンツェにおける党派の政争に破れ、市を追放され、後半生は流浪の中におくったそうだが、政治的、宗教的な争いの中で経験したさまざまな不正義、裏切り、略奪、敵対行為を厳しく糾弾し、同時代の人間が地獄の中で責められる様が描かれている。それは、たとえていうならば、郵政民営化に反対して刺客を送られ、自民党を離党した政治家が、後の放浪生活の中で小説を書き、その中に、責め苦に苦しむ小泉首相や武部幹事長を描いて溜飲を下げているかのような生々しさである。
 同時代の人間だけでなく、過去の歴史上の人物も次々と裁かれる。ギリシャやローマの歴史上の人物、キリスト教世界の作品から多くが引用されているのだが、まあ、日本に移すと織田信長がその残虐・虐殺・皆殺しの罪で裁かれ、明智光秀が主君への裏切りで裁かれ、陸軍大将松井石根が南京大虐殺を断罪され、トルーマンが原爆投下を糾弾され、平家がその驕慢さゆえに滅びたことを哀れまれているようなものである。
 イタリア文学最大の古典といわれる作品もその成立の裏には生々しい作者の感情的裏付けがあり、その内容は、同時代の人にとっては親しみ易いものであったと想像できる。文学作品の創造の瞬間には人間的な業火が燃え盛っている。
スポンサーサイト

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/01/18(金) 17:48:12|
  2. イタリア文学
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<ピアス「トムは真夜中の庭で』(Tom's Midnight Garden)」 | ホーム | ラディゲ「ドルジェル伯の舞踏会」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://dokushoblog.blog28.fc2.com/tb.php/5-9def0ce7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

microd

Author:microd
FC2ブログへようこそ!

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。